定期建物賃貸借(定期借家)は、契約の更新がなく、期間の満了で確定的に終わる建物賃貸借です(借地借家法38条)。 普通借家との違いを表で比べる問題が定番なので、項目ごとに整理しておきましょう。

普通借家と定期借家の比較

項目 普通借家 定期借家
契約の方式 口頭でも成立する 公正証書等の書面(または電磁的記録)が必要。公正証書に限らない
事前説明 不要 契約前に「更新がなく期間満了で終了する」旨の書面を交付して説明
期間1年未満 期間の定めがないものとみなされる(29条1項) 1年未満でもそのまま有効
期間の上限 なし(民法604条の50年は適用しない。29条2項) なし
更新 正当事由がなければ賃貸人は更新拒絶できない(法定更新あり) 更新はない(再契約は可能)
終了の通知 更新拒絶の通知は期間満了の1年前から6月前 期間1年以上なら、満了の1年前から6月前に終了の通知
賃料の増減 増額しない特約は有効、減額しない特約は無効 賃料改定の特約があれば借賃増減請求権(32条)は適用されない

覚え方のコツ

  • 定期借家の条件は「書面で契約+別の書面で事前説明」の2枚
  • 「1年未満」は、普通借家なら期間の定めなし、定期借家ならそのまま有効

事前説明の書面(38条3項・5項)

賃貸人は、契約する前に、あらかじめ、「この賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により終了する」ことを記載した書面を交付して説明しなければなりません。 説明をしなかった場合は、更新がないという定めが無効になり、普通借家として扱われます。

この書面は、契約書とは別個独立の書面であることが必要です(最高裁平成24年9月13日判決)。 契約書に「更新がない」と書いてあり、賃借人がその内容を認識していたとしても、別の書面がなければ定期借家にはなりません。

2022年5月施行の改正で、事前説明の書面は、賃借人の承諾を得れば電磁的方法で提供できるようになりました(38条4項)。 契約そのものも、電磁的記録によれば書面によったものとみなされます(38条2項)。

期間満了の通知(38条6項)

期間が1年以上の定期借家では、賃貸人は期間満了の1年前から6月前まで(通知期間)に、 「期間の満了により終了する」旨を通知しなければ、終了を賃借人に対抗できません

通知期間を過ぎてから通知した場合は、その通知の日から6月を経過した後であれば終了を対抗できます。 通知を忘れても契約が普通借家になるわけではない、という点がひっかけとして問われます。 期間1年未満の定期借家には、この通知は不要です。

賃借人からの中途解約(38条7項)

次の条件をすべて満たすと、賃借人は中途解約を申し入れることができ、申入れの日から1月で終了します。

  • 居住用の建物で、床面積(一部を借りる場合はその部分)が200㎡未満
  • 転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情で、生活の本拠として使うことが困難になった

この規定より賃借人に不利な特約は無効です(38条8項)。 なお普通借家でも、期間の定めがある場合は、中途解約できる旨の特約(解約権の留保)がなければ期間内に解約できません(民法618条)。

その他の関連ルール

論点 内容
取壊し予定の建物(39条) 法令・契約で一定期間後に取り壊すことが明らかな場合、取り壊す時に終了する特約ができる。取壊しの事由を記載した書面が必要
一時使用(40条) 一時使用のための賃貸借であることが明らかな場合は、借地借家法の建物賃貸借の規定は適用されない
サブリース 定期借家でマスターリース契約を結び、賃料を減額しない特約を定めれば、サブリース業者は減額請求できない(サブリースガイドライン)

定期借家は「更新がない」ことが最大の特徴ですが、それを成り立たせるための**手続き(書面・説明・通知)**が試験の中心です。 手続きの一つが欠けたときに「どうなるのか」(無効になるのか、対抗できないだけなのか)を区別して覚えましょう。