賃貸住宅管理業者は、オーナーから預かった家賃や敷金を自分のお金と混ぜないこと(分別管理)と、 管理の状況を定期的にオーナーへ報告すること(定期報告)を義務づけられています。 「金銭の管理」分野の中心となる論点を、法・施行規則と国土交通省「解釈・運用の考え方」をもとに整理します。
分別管理(法16条・規則36条)
管理業者は、管理業務で受け取った家賃・敷金・共益費などを、次の2つと分けて管理しなければなりません。
- 管理業者の固有財産
- 他の管理受託契約に基づいて受け取った家賃など
規則36条が定める方法は、次の2つを満たすことです。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 口座の区分 | 家賃等を管理する口座を、固有財産を管理する口座と明確に区分する |
| 帳簿での判別 | どの管理受託契約に係る金銭かが、帳簿(電磁的記録を含む)により直ちに判別できる状態で管理する |
よく出るポイント(解釈・運用の考え方)
- 家賃等の口座は、オーナーごとに分ける必要はない。家賃等をまとめた1つの口座を固有財産の口座と分ければ足りる(その代わり、管理受託契約ごとに帳簿で区別する)
- 家賃をいったん家賃等の口座に全額入れ、管理報酬分を固有財産の口座に移す、というように一時的に混ざる状態が生じるのは差し支えない。ただし速やかに移し替える
- オーナーへ確実に引き渡すため、固有財産の一定額を家賃等の口座に残しておくことは、適切な範囲なら差し支えない
覚え方のコツ
- 分けるのは「口座(物理的)」と「帳簿(勘定上)」の2段構え
- 口座は「自分のお金」と「預かったお金」の2つに分ければよい。オーナーごとの区別は帳簿で
分別管理の対象になるのは、金銭の管理を行う業務(法2条2項2号)です。 維持保全だけを受託していて家賃を扱わない管理業者には、分別管理の問題は生じません。
委託者への定期報告(法20条・規則40条)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 報告の時期 | 管理受託契約を締結した日から1年を超えない期間ごと、および契約期間の満了後遅滞なく |
| 報告の方法 | 管理業務報告書を作成し、委託者に交付して説明する |
| 記載事項 | ①報告の対象となる期間、②管理業務の実施状況、③入居者からの苦情の発生状況と対応状況 |
| 電磁的方法 | 委託者の承諾があれば可。その後、委託者が電磁的方法を拒む申出をしたら、書面に戻す |
解釈・運用の考え方のポイント
- 苦情は、発生日時、申し出た者の属性、内容、対応状況などを、把握できる限り記録して報告する。単純な問い合わせは記録・報告の義務はないが、苦情を伴う問い合わせは報告が必要
- 1年を超えない期間ごとの報告がきちんと行われている期間中に契約を更新する場合は、更新時の満了に伴う報告は不要としてよい
- 説明の方法は問わない(対面に限られない)。ただし、双方向でやりとりできる環境を整え、オーナーが内容を理解したことを確認する
- 報告事項以外でも、オーナーの求めに応じて報告することが望ましい
覚え方のコツ
- 定期報告は「1年以内ごと+終わったら遅滞なく」
- 報告書の3点セットは「期間・実施状況・苦情」
関連する義務:帳簿と秘密保持
| 義務 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 帳簿の備付け | 営業所・事務所ごとに、委託者ごとの契約年月日、対象の賃貸住宅、受託した管理業務の内容、報酬の額、特約などを記載 | 法18条、規則38条1項 |
| 帳簿の保存 | 各事業年度の末日で閉鎖し、閉鎖後5年間保存 | 規則38条3項 |
| 秘密保持 | 業務上知り得た秘密を漏らさない。管理業をやめた後も同じ。従業者は退職後も同じ | 法21条 |
分別管理と定期報告の違反には直接の罰則はありませんが、業務改善命令や業務停止などの監督処分の対象になります(法22条・23条)。 一方、帳簿の備付け違反や秘密保持義務違反には30万円以下の罰金があります(法44条)。 「罰則があるかどうか」も選択肢の切り口になるので、あわせて確認しておきましょう。